気温が体温を超えたら

毎年この時期は環境適応についての講義を受け持っています。
私の担当は主に海の生物についてなので、講義は浸透圧適応、単純に言えば塩分の濃い環境への適応しくみを中心にしています。
例えば、普段海水に住んでいるタイ(マダイ)は淡水では生きられないし、普段淡水に住んでいるキンギョは海水では生きられませんが、なぜでしょう。
ここでは詳しく説明しませんが、重要なポイントのひとつは、魚の体液は海水の3分の1ぐらいの塩分だという点です。
つまり、淡水は自分の体液より塩分が低い環境で、海水は自分の体液より塩分が高い環境ということになります。
ですので、自分の体の浸透圧を基準にして考えると、淡水に住むのと海水の住むのでは全く反対のことをしなければならないわけです。
濃い環境に適応しているタイは薄い環境に適応する能力が低く、塩分が薄い環境に適応しているキンギョは濃い環境に適応する能力が低いことになります。
 
人間の体液の塩分も魚とほとんど同じです。
そして、人間は海水を飲んで生きられるようにはできていません。
ごく単純に言ってしまえば、人間は塩分が薄い方に適応しているわけです。

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さて、この夏は今までになく高温な日が続いています。
海の環境は、熱水噴出域などを除けば極端に高温になることがないので、私は高温適応については詳しくありません。
しかし、自分の体の条件を基準にするという考え方を当てはめると、低い温度に適応するのと、高い温度に適応するのでは全然違う気がするのです。
体温より低い温度の環境で普段暮らしている人間は、体温より高い環境に適応できるのでしょうか。
熱帯の国々は以前から暑い環境だったわけですが、私が知っている限りでは、そのような国では日中に屋外で活発な活動はしない習慣になっているように思います。
日本でも、従来と同じ夏の過ごし方で大丈夫か、慎重に考える必要があるのではないでしょうか。
 
とりあえず見つけた文献はこちら